A Few Month Later・・・・・・
       〔Last Episode of James-Hudson〕

動乱の時代。
文明の振興と退廃の中,人々は生きる。
誰も笑わずに,誰も歌わずに。
・・・・・・人々は皆空を見上げ,鳥のように自由に生きたいと願い,夢だけを語り合う。
刻は,来るべき新しい世紀へ向けて,人の多くの誤解と悲しみ,諍いとを生み出す。
だからこそ,夢は終わらない,夢は終わらせない。
そう信じて今日も人は生きる。
人は解り合えるはずだから・・・・・・

その日もジェームスは空を見上げていた。
遠くに黒い点が現れるのが見えた。
飛行機だ。
点は次第に大きくなって,シルエットがはっきりとしてくる。
トミィのチェンバースだった。
高度を下げたチェンバースは,ジェームスの姿を緑の芝の中に認めると,ぐんっ,と再び機首を上げ,翼を左右に振った。
(相変わらずだな!?)
ターンし,着陸しようと再び機首を下げたチェンバースを眺めながら,ジェームスはそんなことを思った。
まだ自分の機を 持つことはできなかったが,マック=ベインやガスト=ケイプらの助言を受けながら,ジェームスは彼の”ヴァルコーン”の設計を続けていた。
(いつか,俺もシルフのように自由に空を飛ぶんだ)

「よお,ジム!」
トミィがコクピットから芝の上に飛び降りた。
防風眼鏡と帽子を脱いで,翼の上に放り投げる。
「どうだ,新しいチェンバース?」
「ああ・・・・まだ馴らし運転も終わってない状態だから,何とも言えんけどな,ちょっと左のフラップが引っかかる感じがするな。後で診てくれないか?」
「おう,任せとけ」
ジェームスとトミィはこの新しいチェンバースを持って,ファンボローに乗り込むのである。
ジェームスにとって,初めてのことである。
そして,いつかは自分自身の機でファンボローに行きたいと願うジェームスであった。
今は,パートナーであるトミィの機を最高の状態に持っていこうと思う。
「どれぐらいかかる?」
「昼飯までには診ておくよ。そんでもって,午後にもう一度飛ばしてみよう!」
「おお,分かった」
そう言ってトミィは休憩しようと建物の方に足を向けたが,すぐに立ち止まって,
「ジム,ジム!」
足早にジェームスの所へ戻り,ジェームスの肩を抱いて,わざとらしい笑いを浮かべながら言った。
「さっき丘の向こうから見えたんだけどな,また来てたぜ。マリィって女!!」
ジェームスが振り向くと,向こうに一台の車が停まり,その横に長い髪を風になびかせた女性が立っているのが見えた。

風が,暖かな匂いを運んできた。



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